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2019年2月 1日 (金)

コラム「医師として、武士として」  Vol.107 「か ぜ」    安藤 武士 Andou takeshi

Vol.107 2019. 2.1    

 日本人は、年に5、6回は「かぜ」に罹ると言われている。患者さんが、「”かぜ”です。薬をください。」と受診に来た場合、医師は「そうですね。どんな症状ですか?」ときいて、薬をだす場合が多い。今では少なくなったというが、「抗生物質」が処方しないとないと“ダメ医者”と言われる事がある。医学的には、細菌感染が無い場合は耐性菌を作らないため抗生物質(抗菌剤)は処方しない事になっているが、そこは医療も商売の要素を含んでいるため患者さんの要望に応え抗生物質を処方する。「むやみに抗生物質を処方すると、耐性菌ができるので・・・・。」というクリニックは評判が落ちる。「保険医療」の為、患者もクリニックも少々の費用は気にならない。大抵の場合、数日で治る。 

本題から外れる。インフルエンザは、以前は「かぜ症候群」に含まれていたが、今は違う。2000年、死亡率が70%に達する東南アジヤで流行した「高病原性A型鳥インフルエンザ(H5N1)」が、「新型インフルエンザ」と命名され、危機管理の観点から世界を騒がせ伝染性疾患のスターになった。幸い今では、この「鳥インフルエンザ」は現在まで「ヒト-ヒト」感染が無いため、今日では話題になることはない。一時は、「危機管理対策」が国家レベルでとられ、「新型インフルエンザ」とIT検索すると危機管理指導を生業とする会社名が、三桁の数字で表示されていたのを記憶している。 

2009年春から2010年3月にかけて、メキシコ発のインエンザが世界的に流行した。先に示した「A型鳥インフルエンザ(H5H1)」かーと騒がれたが、結局、「A型豚インフルエンザ(H1N1)」と判明し、「ホット」したことを覚えておられる方も多いと思う。現在では、メキシコ発のインフルエンザは季節性インフルエンザとされている。 

日本では「豚インフルエンザ」と判明するまで大騒ぎをした。南米からの乗客は、成田空港に入国する際、厳しいケックを受け有熱者は成田空港近くのホテルに隔離された。過剰な対策と誹られたが、結果として我々の流行性疾患に対する予防意識が飛躍的に高まり、それと同時に「インフルエンザ」という病気の「格」があがった。 

2009年春のメキシコ発「豚インフルエンザ」流行の際、日本では1400万人が罹患したと言われているが、通常の罹患者数は、年間、約1000万人と言われている。  

本題に戻る。「かぜ」である。以前はインフルエンザも「かぜ」の仲間であったが、現在は「格上げ」され、「かぜ」は「かぜ」として残された。「かぜ」は、我々に最も身近な疾患であるにも関わらず、医学的にも本格的に取り扱われていない。 

今日まで、「かぜ」或いは「かぜ症候群」につて「講義」を受けたことはない。また、高質な「成書」にもなかった。先日、書店で「『風邪』の診かた」という医学書を手にし、斜め読みをしたところ、感心する内容であったので求めた。やはり、「かぜ」について学生時代から体系的に 

”だーれも”教えてくれていないと筆者は書いている。”だーれも”というのは筆者1)の言葉である。筆者の「かぜ」の定義は、「自然寛解する”ウイルス性感染症”で、多くは咳、鼻汁、咽頭痛といった症状を呈するウイルス性上気道感染」としている。 

筆者は、病原性微生物を明確に「ウイルス」としており、「細菌」による感染症を除いている。「かぜ」の診療で最も重要なことは、「細菌感染vsウイルス感染」の違いを明確にすることであるという。「ウイルス感染」は多臓器に及び、「細菌感染」は原則として単一臓器に一種類の細菌感染としている。細菌感染は「抗生物質(抗菌剤)」を必要とするので治療の違いが明確になる。 

咳、鼻汁、咽頭痛(嚥下痛)の3つの症状がそろった場合、「かぜ」と診断するーとしているが、①3つの症状が同等、②咳、③鼻汁、④咽頭痛が主体の場合など、「かぜ」を症状により4分類している。 

②咳のみの場合は「上気道感染症」、②鼻汁のみの場合は「鼻・副鼻腔炎」、③咽頭痛(嚥下痛)のみ場合は「咽・喉頭炎」と診断し、それぞれの治療をすべきであるという。「かぜ”」とは診断しない。 

筆者が強調していることは、それぞれの症状のみの場合、背景に重篤な疾患が潜んでいる場合が多いということである。例えば、「咳」のみの場合、1)気管支炎後咳症候群、2)後鼻漏、3)結核、4)咳喘息、5)GERD(逆流性食道炎),6)百日咳、7)ACE阻害剤、8)肺がんなどの疾患を考えなくてはならないという。 

3症状がそろった場合、「かぜ」と診断し対症療法のみで問題はないことを強調している。 

”かぜ”の民間療法には、ネギ、ショウガ湯、ニラ、葛湯、卵酒、・・・・など色々な療法がある。卵酒は有名であるが、アルコールは実際には病状を悪化させるようであり、推奨はされないようであるが、小生は”ぞく”とすると、アルコール消毒を十分してお風呂に入り床に就くようにしている。何事も、個人差があるので心配はしていない。「家庭の医学」を終える。(完)

 

1)岸田直樹:誰も教えてくらなかった「風邪」の診かた、医学書院、2012.

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