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2020年2月12日 (水)

【健康ジャーナリスト・原山建郎のコラム】 中村哲医師、〈いのち〉のことばー100の診療所より1本の用水路。日本のカルカッタがあるはず! マザー・テレサ〈いのち〉のことば 連載「つたえること・つたわるもの」77-③

連載「つたえること・つたわるもの」77-③ 2020.2.12 (ゴム連載 NEXT「つたえること・つたわるもの」80より)

たとえば、国連WFP(食糧計画)は、アフリカの飢餓を救うために航空機による援助物資(食糧)の空中投下を行っている。これには地上でのアクセス(食糧輸送)が困難という理由もある。しかし、これはあくまでもひとつの譬えだが、食糧が投下された所にひとつの村ができ、その食糧を食べつくすころに、次の食糧投下地点に村ごと移動する。そして……という際限のない繰り返しからは、本質的なレベルでの「飢餓からの救済」は見えてこない。アフリカの人びとが自らの手で農地を耕し、家族の〈いのち〉をつなぐ日々の食糧を得るためには、中村さんがアフガニスタンの人びととともに汗を流して井戸を掘り、灌漑用の用水路を建設することを通じて、人々の〈いのち〉を支援する「一隅を照らす」ような支援が求められている。
また、たとえばユニセフ(国連児童基金)のホームページには、「あなたのご支援でできること」として、寄付金の金額別支援内容が示されている。
☆3000円のご支援が重度の栄養不良に陥った子どもを回復させる治療ミルク236杯に変わります。/☆5000円のご支援が、3つの感染症(破傷風、百日咳、ジフテリア)の混合ワクチン448回分に変わります。(中略)/☆50000円のご支援で、予防接種や母乳育児の大切さなど、命の守り方を広める地域保健員50人を養成できます。

もちろん、このようなユニセフの支援活動による、世界の飢餓に苦しむ子どもたちへの寄付は重要な活動である。しかし、2008年の国会(外交防衛委員会)に参考人として招致された中村さん(ペシャワール会現地代表)の発言は、もっと深い〈いのち〉のことば、である。
○参考人(中村哲君) 衣食足って礼節を知るといいますけれども、まずみんなが食えることが大切だということで、私たちはこのことを、水それから食物の自給こそアフガニスタンの生命を握る問題だということで、過去、ペシャワール会は干ばつ対策に全力取り組んできました。私たちは医療団体ではありますけれども、医療をしていてこれは非常にむなしい。水と清潔な飲料水と十分な食べ物さえあれば恐らく八割、九割の人は命を落とさずに済んだという苦い体験から、医療団体でありながら干ばつ対策に取り組んでおります。

また、民主党所属の参議院議員、犬塚直史氏の「アフガニスタンにおけるPRT=地方復興チームの活動」に関する質問に対して、中村医師はこう答えている。
○犬塚直史君 そうした困難な状況の中、二十五年余にわたって、まさに現地化というよりも土着化して、これは中村先生がおっしゃったことですが、土着化して頑張っている活動に心から敬意を表したいと思います。
その上で、私は最近、現地でヨーロッパのPRT(※Provincial Reconstruction Team:地方復興チーム=大規模な戦闘終結後の治安の悪い地域での復興を助けるための国外勢力による組織)と民軍が一緒になっている活動の実態を聞き取り調査をした際に、何が何でも応援はするが、モスクだけは再建することはできないというようなお話があったのが非常に印象に残りました。
そこで、中村医師の報告の中で、「誤解される「マドラサ」」と、マドラサ(イスラム世界の高等教育機関で、モスクと併設されることが多い)というのはイスラム神学校と訳されているわけですけれども、これについての御報告がありました。ちょっと引用させていただきます。マドラサは通常イスラム神学校と訳され、タリバーンの温床として理解されているが、実態は少し違います。マドラサは地域共同体の中心と言えるもので、これなしにイスラム社会は成り立ちません。イスラム僧を育成するだけではなく、図書館や寮を備え、恵まれない孤児や貧困家庭の子供に教育の機会を与えると。そのマドラサを水路と一緒に再建の協力をさせたという、その体験を少しお話しいただけますか。
○参考人(中村哲君) まず、PRTについて言いますと、ほかの地域は知りませんけれども、ジャララバード(アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都)を中心に、東部、南部、北部で、北部というか北東部で行われておるPRTの実態というのは、実は軍事活動の一環としてとらえてまず間違いない。
例えば医療関係でいいますと、突然米軍の装甲車がやってきて薬を配らせてくれと言う、診療所で。で、とんでもない、なめちゃいけないよ、我々は医者だぞ、正しい診断なしに兵隊が薬を配れるかと言って私たちは断りましたけれども、ほかのNGOはそうはいかない。反対するとやられるかもしれないという恐れでもってそれを受け入れる。副作用も分からない、何も分からないということで、薬をばらまいて一日で過ぎ去ってしまう。これはごく一例でありますけれども、明らかにこれはPRTの、いいPRTもあるんでしょうけれども、私が目撃したPRTというのは、ほぼ米軍の活動を円滑にするための宣撫活動に本質的に近いものだというふうに考えて間違いないと思います。
だから、私たちがヘリコプター、米軍から襲撃を受けたときも、PRTと密接な関係を持ってというふうに言いましたけれども、PRTと接触すること自体が危険を招くということで、一切ペシャワール会としてはPRTとの接触を断っております。もちろん敵対するつもりはありませんけれども、巻き込まれるつもりもありません。
(参議院会議録情報 第170回国会 外交防衛委員会第4号)

キリスト教(プロテスタント)作家の三浦綾子さんが、『道ありき』(主婦の友社、1989年)に残した、〈いのち〉のことば。

ほんとうに人を愛するということは、
その人が一人でいても、生きていけるようにしてあげることだ。

☆上医は国をいやす
西暦454年から473年にかけて書かれた、中国の陳延之の著書『小品方』に「上医医国、中医医民、下医医病(上医は国をいやし、中医は民をいやし、下医は病をいやす)」と書かれている。
この言葉は、もともと中国春秋時代を扱った歴史書『国語』晋語八の「上医医国、其次医人」に由来するもので、この「上医は国を医す」という言葉は、すぐれた医者は、国の疾病である戦乱や弊風などを救うのが仕事であって、個人の病気を治すのはその次である、というほどの意味らしい。

しかし、中村哲医師が今回、アフガニスタン東部で行った「井戸の掘削、用水路の延伸、取水堰の設置」という〈医療〉行為は、中医(民をいやす)のレベルをはるかに超えて、上医(国をいやす)に価するレベルの〈医療〉ムーブメントであったのではないだろうか。

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