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和歌山へ旅行付き添い看護してきました

9月13~15日に東京から和歌山への2泊3日旅行付き添いをしてきました。
間質性肺炎で入院中の60代の奥様で、ご自分でも体調の悪化を感じる中で、「ご先祖のお墓参りがしたい。どうしても和歌山に行きたい」と希望されたのです。
24時間酸素が欠かせず、ちょっとした環境変化で強い咳が出るため麻薬でコントロールしている状況です。歩くのもままならず、食事もペースト状態です。「最後の旅行」という言葉が奥様から出た言葉でした。それを見守るご主人、ご家族、そして病院のスタッフも何とかその希望を叶えたいと本当に一生懸命でした。
 入院先の医師と担当看護師から情報を得、さらに納得するまで話し合う中で、苦痛を最小限に、安心して家族の時間が楽しめるよう、私の素手の看護を、看護の心を提供したいという思いが強くなっていました。起こりうる事態を予測しながら準備をし、1つ1つ確認をして行きました。呼吸状態や心臓への負荷の程度を見落とさないよう心身の状況をそれとなく観察し、呼吸法を促す声かけをすること、酸素ボンベの確認、食事の準備、内服薬の確認、移動の介助等々、やらねばならないことはたくさんあります。
それらを確実に行った上で、どう声をかけ手を添えて呼吸を整えるのか、どのタイミングで休息を促して、いかに家族と思い出に残る時間を作っていくのかという看護の判断が必要となります。そして医療者は自分だけという環境の中で、予測をしながらその場でその場で判断をし、いかにさりげなく自然に看護を提供できるのか。私も自分自身への挑戦でした。
新幹線とタクシーで約6時間、和歌山へ着いて「私、本当にここまで来れたのね。嬉しい!」と笑顔を見せてくださいました。
マグロや鯛の刺身を細かく切ったものやトロミをつけた土瓶蒸しを、自ら召し上がって「あ~おいしい、これは東京じゃ食べれないわね」と・・。
それを見ているご主人も「良かったなぁ」と本当に嬉しそうです。
部屋の露天風呂にも介助して半身浴しました。その露天風呂は海に面しており「夜の海を見ながら入るお風呂って最高」と、病院ではシャワーしか入れなかったそうです。
翌日には弟さんの案内の下、006
先祖代々のお寺で念願のお墓参りをしご自分で線香を立てて、お経をあげていただきました。「あぁ、これで供養ができたわ、この日のために頑張ってきたんだもの」と・・。
そして息子さんたちに先祖の歴史を母としてしっかり伝えておられました。
市内観光を終えた後に、ご主人の提案で旅館でやっているエステも受けることができました。最初は緊張されたものの「何年ぶりかしら」とうっとりされた表情でお肌もツヤツヤになりました。
最終日には予定外にも大阪の展望台からパノラマ景色を楽しみ、たこ焼きもおいしいと召し上がりました。
途中、人混みや外気温の高さで呼吸が促迫したり、新幹線で思うように食事がとれず低血糖になったり、長時間の移動で疲労して横になったりという場面もありましたが、心温かい家族と親切なドライバーの協力があって何とか無事に旅行を終えることが出来ました。
病院へ戻ったあと、病室で手をギュっと握って「私、自信がついたわ。また一緒に行きたいわね。安心をたくさんくれてありがとう!」と涙を浮かべておしゃってくださいました。私も疲労はどこへやら、ただただその言葉が嬉しくて、「看護師やっててよかった~」と私も涙が溢れてきました。短い期間でしたが心と心が繋がった気がしました。
私にとってこの出会いは最高の宝物になりました。まだまだ至らないことはたくさんあるけれども、こうした出会い、こうした瞬間をひとつひとつ大切に積み重ねていきたいと思います。
奥様、ご主人様、ご家族の皆さん、そして病院の医師、看護師の皆さん、内部の仲間たち、ありがとうございました。

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コメント

和歌山への旅行付き添い看護、お疲れ様でした。
二泊三日の旅行が素晴らしい時間であった事がその文面から伝わってきます。
ご先祖へのご供養とご家族での触れあいと語らいの時間。
その時間が持てたのは、黒子に徹しながら確実な看護の技と心を提供したナースの存在があったからこそであった事を思います。
手を握り、その感謝の思いを伝えられたご本人の喜びが伝わってくるようです。

同じナースとしてとても嬉しい報告文でした。
ありがとうございます。

投稿: kokoronronn | 2008年9月20日 (土) 17時26分

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