« AABCセミナー | トップページ | 職員募集は締め切りました。 »

医療改革と「男と女」の構図、土佐の国を訪ねて

市民の眼   尾崎 雄 Ozaki Takeshi (老・病・死を考える会世話人)

1942 生まれ。65年早稲田大学卒業、日本経済新聞社入社。札幌支社報道課、流通経済部、婦人家庭部次長、企画調査部次長、「日経WOMAN」編集長、婦人家庭 部編集委員などを経て、日経事業出版社取締役編集統括。高齢社会、地域福祉、終末ケア、NPO・NGO関連分野を担当。現在、フリージャーナリスト・仙台 白百合女子大学総合福祉学科教授・AID(老・病・死を考える会)世話人・東京大学医療政策人材養成講座2期生。著書に「人間らしく死にたい」(日本経済 新聞社)、「介護保険に賭ける男たち」(日経事業出版社)ほかがある。 市民の眼 医療福祉の断面やエピソードなどについて 医療職ではなく一市民として気づいたことが書かれています。 >>>バックナンバー


vol.49  医療改革と「男と女」の構図、土佐の国を訪ねて 2009-3-9 

 

ラーラーラ、ダバダバダ、ラーラーラ、ダバダバダ……フランシス・レイのテーマ音楽で知られたクロード・ルルーシュ監督の「男と女」。つれあいを失った子持ちの男と同じ境遇の女がたまたま出逢って離れがたくなる、このフランス映画は何度見ても飽きない。ジャン=ルイ・トランティニヤンとアヌーク・エイメが演じる「お父さんとお母さん」が、やがて、「ひとりの男とひとりの女」に変わっていく、ありそうでなさそうな、なさそうでありそうな人生のエピソードを描いているからだ。

医療における男と女を語るに当たって、旧いフランス映画を持ち出したのは、ほかでもない。先日、土佐の高知を訪ねたからである。彼の地では男と女の構図は「いごっそう」と「はちきん」。頑固者の土佐男にしっかり者の土佐女という組み合わせだ。たった3日間の高知滞在とはいえ病院と訪問看護ステーションで働く看護師・訪問看護師や医療NPOを動かす女性代表およびバーや居酒屋で男客をもてなす女性たち会って「はちきん」の意味がよくわかり、土佐の女性たちにすっかり魅了されてしまった。

むろん、土佐の国でも建前社会の仕組みや制度を動かすのは依然として男であることに変わりない。封建遺制が色濃く残る医療界ではその傾向が顕著である。とりわけ旧い土地柄の高知では「男を動かす術を熟知した女性に一肌脱いでもらって、男である医師たちを動かさねばならない」そうだ。ほんとうにそうなのか? とりあえず羽田空港を発ち、高地龍馬空港から

高知市

内へ。

真っ先に訪ねたのはがん患者支援団体の事務所とK病院の地域医療連携室である。患者支援のNPO法人代表を務める年配の女性は、愛娘が不治の癌を患ったと知った翌日に自分が経営する化粧品店を畳んで癌治療法を探し始めた。それがきっかけで高知県の癌患者支援活動に奔走し、高知県がん対策推進協議会の設立を促し患者・家族を委員として協議会委員参加を実現した。

次に訪ねたのは民間病院の地域医療連携室。ここの室長・看護師長は日本看護協会の緩和ケア認定看護師。NPO法人高知緩和ケア協会の事務局長である。同協会は高知県内の緩和ケアネットワークのコーディネートを担当し、事務局長の彼女がその仕事を一手に切り盛りしている。彼女が仕切る在宅医療カンファレンスを見学させて頂いたが、医師や看護師から報告を促し、的確な指示をよどみなく下していく采配ぶりは見事だった。

病院内で、まして地域医療の最前線である在宅医療の現場では看護師なしでは医師は手も足も出ない。有能な医師ほど地域医療の真の担い手は看護師であることを熟知している。別の民間病院の訪問看護ステーションを訪ねると、管理者の訪問看護師は、突然の訪問者にもあわてず騒がず、日常業務をテキパキこなしながら資料を示して高知県の訪問看護の課題とステーション経営の問題点および今後の方向性について歯切れよく語ってくれた。

「だから、医師たちを動かす力を備えた看護師に医療改革活動の要を引き受けてもらったのです」。

高知市

内で営業する訪問薬局の経営者が、そう語る意味を現地で実感した。高知県庁も訪ねたが、担当者もその辺の呼吸は心得ているようだった。土佐の男は果報者である。

男勝りではないものの、ものごとの本質を見抜き、社会や組織の表向きは男手に任せ、男衆を立てながら内実を仕切る。そんな意味でのしっかり者である土佐の女性たち。すなわち山内一豊の妻のようなタイプの女性医療職こそ、日本の医療改革を推進する影の立役者だと期待したい。

高知県は平成22年、NHK大河ドラマ「龍馬伝」放映に合わせて「土佐・龍馬であい博」を開催する。封建日本に近代の曙をもたらした立役者の一人、坂本龍馬を育てたのは土佐の女たちだった。「はちきん」とは土佐弁で一人で四人の男を手玉に取る女性をさすという。

|

« AABCセミナー | トップページ | 職員募集は締め切りました。 »

コラム 尾﨑 雄」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 医療改革と「男と女」の構図、土佐の国を訪ねて:

« AABCセミナー | トップページ | 職員募集は締め切りました。 »