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薬も飲みたくない、飲ませたくない

● 須之内 哲也 sunouchi tetsuya         

事故に遭わなければ一時代を築いたに違いない元・オートレーサーによるコラム

「須之内 哲也の世界」~もう一度会いたい~

「おれが生きているのは初美のおかげ。ただ、もう一度会いたい」。
その時々の情景を思い浮かべながら、ひたすら心の内を書き綴っていく。

事故に遇わなければ・・船橋で注目され一時代を築くとうたわれた元オートレーサー、
彼の車名は知る人ぞ知る『ホージョウ』。
レースの賞金で自家用車をもらうほどの一流選手で、弟子を十数名も抱え、師匠と呼ばれるほどにのぼりつめていた。
しかし、30歳にならない歳で脊髄を砕く大事故に遭い選手生命を閉ざされた。
車椅子での生活を余儀なくされ、周囲に当り散らしたこともあった。そんな時、妻の初美さんが見せる悲しそうな顔。
「哲っちゃんのニコニコ笑っている顔が一番好き」という初美さんの言葉・・
それからの生活はいつも一緒で何をするにもふたりだった。
しかし、初美さんは9年前、彼の手の中で逝った。「哲っちゃん、愛してる」の言葉を遺して・・。

⇒バックナンバー(vol11以降)

⇒バックナンバー(vol10まで)

vol.24. 2009-6-6薬も飲みたくない、飲ませたくない

 そして、五月の連休が過ぎ、痛み止めが座薬になった。「新薬の抗がん剤を、入院して使ってみる」と先生から言われた。今から新しい抗がん剤を飲むことは、何で、と言う思いでいた。どうしても入院を断ると、通院で飲む事になって薬が出された。初美が、「新しい抗がん剤も、飲みたくないけれど、断りきれないもんね」と「一回だけ飲もうか」と家で飲んだ。すぐに気持ちが悪くなって、「立てない、夕食の支度も出来ないよ」と言い「辞めよう」と、それからは、飲まなかった。次の診察日、先生に断ると「通院ではダメなのが分かったので、入院で」と「吐き気やむかつきを押さえる薬は病院にあるから心配ない。一回では分からないから、続けないと」と入院して、新しい抗がん剤にする事を、何回もすすめられた。
 初美と私は、先生に、入院と、抗がん剤を断るのが大変で、悩んでしまった。入院して強い抗がん剤をすれば、初美がヨレヨレになって動けなくなってしまう、と思っていた。 初美の身体も弱って来ているので、辛い毎日だった。私が「先生に、俺がはっきりと断るよ」と言うと初美は「哲ちゃんが言うと、嫌な顔されるといけないから、自分で言うよ」と初美が断っていた。だんだんお腹が痛い、と言う回数が多くなってきていた。我慢出来ないほどでもないらしく、毎日、二人で散歩し、夕食の支度をしていた。でも、まだ、「ケーキ食べに行こうか」と言って、私は、ケーキなんか、と思いながらも、不二家に行った。
 5月20日 前日に、病院の診察日で、行ってきたのだが、「お腹が痛くて、座薬を飲んでも、効かないから、病院行こう」と言い、すぐに連れて行き、診察してもらうと、痛み止めの薬が、MSコンチンに変わった。私は説明されていたので、分かっていた。家に帰ると、痛みも治まっていて、私は、初美に説明も飲ませる事もしなかった。

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