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2019年1月

コラム「医師として、武士として」  Vol.105 「老化:フレイル」    安藤 武士 Andou takeshi

1941年、新潟県生まれ。1967年、新潟大学医学部卒業後、医師登録と同時に外科研修を開始。

インターン終了後医師となる。新潟大学付属病院(外科助手医局長)で勤務の後、72年、呼吸器・心臓血管外科を専攻後、80年より、心臓血管外科部長として日本赤十字社医療センターに勤務。その後、山梨医科大学非常勤講師、JR東京総合病院(心臓血管外科部長)、明治安田生命(事務センター診療所所長)、JR東厚生部(水戸支社・高崎支社・新潟支社健康管理センター所長)、佐野市民病院(健康管理センター所長)、介護老人保健施設たかつ施設長を歴任。現在は、(社団法人)労働保健協会の診療所所長として活躍中。労働衛生コンサルタント・スポーツドクター(日体協)・健康スポーツドクター(日医)・認定産業医(日医)の資格を持ち、5つの顔を絶妙な味で使いわける医学博士である。身体の大きさと、豪快な笑い・笑顔には、その人柄と存在感をより強くアピールする何ものかが潜んでいる。今なお、'武士'にして"武士"ここにあり。  

Vol.105 2019. 1.14  老化:フレイル

 今回もスタバから発信している。数年程前から、立姿、歩き姿を「老人姿」とならぬ様に、近くのトレーニングジムに通っているが、先日、トレーニング中、腰筋を断裂した。現在は、治癒傾向にあるが、以来、甚だしく身体機能が低下し“並みの老人”になってきた。再起を願いトレーニングに励んでいるが、断裂前の身体機能に戻っていない。鍛えれば元に戻ると思っていたので不思議に思い、「老人の身体機能」、「老化」をこわごわと調べてみた。

 平成29年の日本人の総死亡数は134、400人と発表されている。3大死因は、がん、肺炎、動脈硬化性疾患(心疾患・脳血管障害)であるが、炎症疾患である肺炎が一万余(9.9%)と第3位に食い込んできている。その背景には誤嚥・免疫力の低下など「ヒト」の“老化”が関わってきていると言われている。

現在の医学では、生きる上限は120歳と決まっており、その間に起こる身体機能の衰え、”老化”は生物にとって避けられないものであるが、“老化”は言葉として理解はできるが、体内で何が起こっているのか理解していな人が多いと思う。無論、小生もその一人である。先人の書物を中心に調べたところを記す1)2)3)4)

「老人」の生物学的現象の定義はない。「老人」は社会的定義で成り立っている。高齢、高齢化社会も同様である。「老人」の社会的定義は65歳以上となっているが、65歳以上を老人と呼ぶのは、WHO(世界保健機関)でそう決めているからであるという。

本邦では、それに適合させた社会制度にとなっている。定年は多くの職場では60歳であるが、現実として60歳~65歳までは働く職場を提供している。60歳で基礎年金が、65歳で共済年金、厚生年金の支給が開始される。社会保障制度から「老人」と定義されるのである。元気な高齢者でも65歳を過ぎると、「老人」と呼ばれ社会制度上、「現役」と明瞭に区別される。

 「老化」である。「ヒト」は「年を取るとなぜ身体の機能が衰えるのか」、すなわち「老化」の精緻なメカニズムは解明されていない。「老人」という言葉は社会的定義に基づく用語で、「老化」は生物学的定義による。「老人」は65歳というデジタル的に決められた確固とした名称で、「老化」はアナログ的現象で何歳から「老化」が始まるとは言えない。従って、「老人」、「老化」は同―語ではない。

動物の生涯(寿命)は、三つの期間から成立しているという。第一期は、生まれてから「性成熟」にいたる期間でこれを「成長期」、第二期は子孫を盛んに作り、育て上げる(子が一本立ちする)までの期間でこれを「生殖期」、第三期は生殖期を終わった後の余生とも言うべき期間で、これを「後生殖期」と呼ぶ。生物の寿命の三期間は、全て「遺伝子」で決まっている。

ツバイ、ヤセザル、アカゲザル、テナガザル、ヒヒ、ゴリラ、チンパジーなどの霊長類の個々の最大寿命(Y軸)と性成熟年齢(X軸)を対比させグラフに描くと一直線上にあり、「最大寿命」と「性成熟年齢」とは、深い関係にあることが分かる。多くの霊長類は、「生殖期」が終わるとわずかな期間の「後生殖期」を経て「死」を迎える。他の野生動物は大変厳しい環境の中で生きてかなければならないので、「後生殖期」を迎えないで「死」を迎えるようであるので詳細は明らかになっていない。

一方、「ヒト」だけは例外で、「後生殖期」の方が長いのである。生物学的観点からは、「生殖期」まではホメオスターシスというメカニズムが働いて身体機能の恒常性を保ってくれるが、「後生殖期」では遺伝子は必ずしも保証してくれない仕組みになっている。

「年を取ると身体の機能が衰える現象」を「老化」と呼ぶならば、「老化」は、「後生殖期」から始まることになる。

今日の医学では、「年を取ると身体機能が衰える現象」を「老化」ではなく「フレイル:Frailty」と呼ぶようになってきている(2014年、日本老年医学会命名)。「フレイル」は、「身体的フレイル」、「精神心理的フレイル」、「認知的フレイル」、「社会的フレイル」を包括しているが、「老化」も「フレイル」も、高齢者の身体機能の低下という現象を表現するもので、学問的にまだ「フレイル」の生物学的現象及びその本質は解明されていない。(続) 

1) 今堀和人:老化とはなにか:岩波新書 1993

2) 田沼精一:ヒトはどうして死ぬのか:幻冬舎新書 2010

3) 南野 徹:老化からみた生活習慣病診療の展望:新潟医学会誌:2018

4) 佐竹昭介:フレイルの概念・診断:日本サルコペニア・フィレイル学会誌:2018

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