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感受性を揺さぶる学習環境が必要なのでは?

 村松さんが2003年に書かれた文章を紹介させていただきます。「こころのレストラン」への思いが綴られています。ぜひご一読ください。(東堂衛)

■  感受性を揺さぶる学習環境が必要なのでは? (2003-11-12)

 「『こころのレストラン』をつくりたい」そんな思いを、心の中で、ず~っと温めている。しかし一方で、「これは夢で終わるかもしれない」と弱気になっている私がいる。新しいことへの挑戦意欲が落ちたのか、それともエネルギーが一時的に消耗しただけなのか。いずれにしろ、いつになく弱気になっている。それでも『こころのレストラン』が必要だと思っている。

 私の頭の中で描いているそのレストランとは、食事をする部屋を指しているのではない。信頼的な人間関係を導入した教育活動のメンタリング、対人接触の技術や新しい習慣を身に付けられるように支えるコーチング、そして行動変容をサポートするカウンセリングメニューの外に、コミュニケーションや対人関係、看護・介護に関する教授―学習法が自分のペースで学べるような種々のチャレンジメニューを揃えた学習の空間のことである。自分に合うメニューを、助言を得な がら自分で選び、その方法で学んでいける場をイメージしている。

 人は、迷ったり戸惑ったり悩んだりしたとき、自分に適した学習環境があれば、感受性が揺さぶられ、前向きになれる。そして、一歩ずつでも自分の力でそれらを乗り越えようとするのではないか。

 昨年の自殺者数は約3万2千人で、その半数は30~50歳代の働き盛りだと報告されている。経済不況が長引く中でのリストラや会社の合併。"ホールディング社"という名のもとに、その支配会社は、外見上いかにも大きく力強く見える。しかし、その内情は思いの外がたついている。会社の合併理由が人件費を削減するための単なるリストラ策だったりする。そんな中で被害を被っているのは、必死に働いてきた社員である。「妻には話せない」「家には帰れない」「家には帰 りたくない」。心の中に起こる葛藤、それがさらに強くなり、思い詰めて、自己を見失う。

 人間関係が薄れた今の社会、職場でも、家庭でも、いろいろな形で苦情が噴出し、先行きの不安からストレスが増大する。そして自分を自分が追い込めていく。あと一歩を踏み出せないために、その場から立ち上がれない。心がついていかない。どうしたらいいのかわからない。モチベーションはどんどん下がっていく。自分だけが苦しんでいる、自分だけが辛い、自分だけが救われないと思い込み、自らを哀れみ、死にたくなる。真っ暗闇に入り込んでしまうのである。もはや、周りは何も見えない。自分の本心さえわからない。

 今では、若い世代にもその傾向が増えている。若い世代の方にこそ、その傾向は強いのかもしれない。まだまだ元気に人生を楽しめるはずなのに「死んでしまいたい」と思い、簡単に「死」を選ぶ。物事を極端に深刻に受け止め、些細なことを気にするようになって、心が病んでいく。自分は「嫌われている」「見捨てられた」「裏切られた」という思いが募り、「キレて」しまう。簡単に「殺意」を抱く。閉ざした心は、身近な人 とも付き合えなくなっている。

 個を尊重しよう、自由を認めようといいながら、一方で、思いつきの中途半端な規制が強いられる今の時代、何かが狂っている、何かが足りない。

 戦争を知らない私たちの心の中には"依存"と"自己顕示"の2つの裏腹な姿が潜んでいる。一人ひとりの心と向き合って、感受性を揺さぶり、心の奥に眠っている感性に訴えるような、そんなメニューを揃えた『こころのレストラン』が必要なのではないか。

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コメント

こころのレストラン。
なかなかの発想です。それをパソコンをテーブルにして、囲んで話をするような関係作りをするのです。わたしはメールグループ「Monokaki-fans」を持っています。二年間で7000通のメールの行き来があります。このグループは年配者の楽しみが目的です。明日はベネチアで忘年会をします。みんな張り切っています。でもあくまでバーチャル忘年会です。教育的な枠をつくらないで、わたしのように人生の終わりに近くなっている人間でも発言できる場所。何か言葉をもらうことが、生きるヒントになる……そんな方法です。
以上、何かの参考になればと思いました。

投稿: 寺山あきの | 2005年12月19日 (月) 19時20分

コメントをいただきまして、どうもありがとうございます。「生きるヒントになる空間」を目指されているとの言葉に、とても勇気づけられました。自由な発想を大切に、こころのレストランを実現できたらと思います。これからもどうぞよろしくご指導ください。

投稿: 東堂衛 | 2005年12月20日 (火) 09時59分

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